野口整体を愉しむ

未来を先どりする野口晴哉の思想と技法

からだ

からだという表現を、心的領域と身体的領域とから区別するうえで用いることにしたい。もちろんこの用い方は一般的なものではないが、心と身体が強く影響しあう心身領域のことをそのように呼べば、野口整体をより理解しやすくなると私には思えるからだ。

喜びに顔が輝く。悲しくて涙する。緊張で胃がシクシクする。こうした感情や情緒といわれるレベルでは心と身体が密接に関係しあっていることは容易に理解できる。

ところが、羽根の生えたペガサスという表現をこころに描いても、それが身体と関係しあっているとは理解できない。心のなかで独立して存在しているようにみえるからである。

一方で身体が身体自体として独立して存在しているように見える領域、たとえば無意識におこなってしまう身体運動、野口整体では錘体外路系運動は、こころとは自立しているように見えるし、実際心によって血糖値や脈拍数を自在にコントロールすることは難しい。

つまり、心それ自体としてあるいは身体それ自体として存在するように見える領域は基本的に野口整体の対象領域とはならないと言っていいだろう。