野口整体を愉しむ

未来を先どりする野口晴哉の思想と技法

整体操法の基礎を学ぶ(3)背骨の可動性を観察する

急所の偏り疲労

体に疲労が偏っていても、急所でなければ一晩寝れば治ってしまう。しかし肩の急所に偏り疲労が生じると肝臓や胃にも影響を与える。

足首がちょっと狂っても胃袋は悪くなる。腓骨と脛骨の間が拡がって右足が太くなると、食欲がなくなったり、お腹にガスがたまる。虫様突起に愉気をするとガスは抜けるが、虫様突起のない人には効かない。足の三里に相当する処を刺戟するとガスは抜けるがまた溜まるので、問題は脛骨と腓骨の間の拡がりを調整しなければならない。

足の踝の外側に力のかかる癖の人は、足が太くなりガスがたまりやすくなる。その結果胃袋までガスがたまり、閊えて胃酸過多現象を起こしたり、場合によっては胃下垂になる。

足の一部に余分に力が加わっただけで消化器に変調をきたしたり、肩が凝ったり、イライラしたり、怒りっぽくなったり、好き嫌いが激しくなったりして、相手の本来の感受性が歪み、体内の変調にまで影響してくる。特に急所に於ける偏り疲労が、感受性を通じて生活機能にまで歪みをもたらしてくる。従って、相手を本来ある姿を理解するために、これらの歪んだ現象を差し引いて(引き算の法則)見ることが大切となる。

鳩尾に偏り疲労が起こると、元気がなくなり無気力となる。言いたいことも言えなくなり、だんだん抑制的になってくる。この部分に塊り(禁点の硬結)ができると、四日目に死ぬ。たくさんある急所のなかでもこの鳩尾は非常に大事で、普段からここに余分な力が入るような姿勢をしていると、寿命を削ることが多い。

 

肩の操法に於ける要点(練習)

呼吸の間隙に刺戟を与えると最も効果をあげられることは前回述べたが、一呼吸のことを言っているのではない。相手が我慢できるいっぱいのところを呼とし、緊張の我慢ができなくてふっと吐く、それを吐く息として、その間隙にショックをすることである。一呼吸、一呼吸ではなく何呼吸かして詰めうるところ、それを呼として調べていく。いくら我慢してもそれには限界があって、必ず弛めざるを得ない時がある。その時を利用して押さえる。

 

背骨の可動性を観察する(練習)

背骨の弾力性を調べて、可動性の悪い骨を見つける。そうした骨は、神経の末梢の臓器に何らかの運動の不調和がみられる。

背骨はその人の体癖によって歪む方向に癖があり、開閉型は下方に、上下型は上方に、といった傾向がある。

今日は面倒でも、一つ一つ揺すぶって観察してみる。腰椎部は硬くて判りにくいし、頸椎部は柔らかくて狂いやすいので、胸椎部で練習する。揺すぶりながら、動きすぎるもの(過敏痛がある)と、動かないもの(圧痛がある)をまず見つけていく。

受ける方は呼吸を詰めていると固くなって動きにくくなるから、うつ伏せで、手は両脇に下げて、体中を弛める姿勢をとる。

体が弛まないときは、肩か胸椎十一番を押さえて息を吐かせてから調べる。

一回目はまたがって調べ、二回目は横に座って一つ一つ押して調べ、三回目はちょっちょっと触るように、軽く叩くように調べる。

力を使わない調べ方ができるように工夫する。だんだん力ではなくそーっと触って変動が判るようになるまで練習する。

顔に表情があるように、背骨にもいろいろな表情がある。観察は、興味をもって一生懸命やることが上達の近道。