野口整体を愉しむ

未来を先どりする野口晴哉の思想と技法

整体操法の基礎を学ぶ(4)椎骨の転位とその意味

I先生宅での学びの四回目。いつものように、まず、いただいた資料を友人と私で声を出して順に読み、続いて先生からの説明、講義と、それに続く実技指導とその練習。

 

病気は治すべきものか

病気を治すという行為は、人間の体にどのような影響をもたらすか。病気をするとはどういう状態をいうのか。それを治すということにはどのような意味があるか。まつたけが赤松の木の根元にしか出来ないように、病気にはそれが病気として育っていく一定の規格というようなものがその体に必要である。整体では、たとえばがんそのものの構成を調べ追求するのではなく、それが育つような体の特性といったものを対象にする。病気が体力誘導を発揮できるのではないか、居眠りしている潜在体力を呼び起こすことができるのではないか、溌剌としたからだになるきっかけになるのではないか。その為には、からだのいろいろな状態を、目的に合うように調節するための技術が必要となる。整体操法は、からだの機能をいろいろ調節しながら、病気を利用して、からだを丈夫ぶにしていく、そういう目標でその技術が組み立てられている。

 

 椎骨の変動とその意味付け

咳について背骨を観察すると、咳の状態は、頸椎6,7、胸椎1が突出している。頸椎6,7の間がくっついているのは、吐くような、むせるような咳となり喉が腫れる。頸椎7と胸椎1のくっつきは、咳がなかなか止まらない。胸椎2の上方転移は、咳が布団に入った時にでる。食べ物がのどで閊えた時、胸椎4を叩けば通るが、胸椎5を叩くと余計に詰まる。胃痛の時、胸椎11を押さえると整うが、腰を押すとまた痛み出す。胸椎4が心臓と関係するといって狭心症を起こしている時にそれを叩くと、いよいよ唇が紫色になってしまう。ところが胸椎8を、叩くというよりはもっと激しい力を加えそれをると、狭心症も発作も好転する。頸椎7は迷走神経の張力と関係する。ここの使い方は難しいが、自律神経失調症はここで調整可能。胸椎3は肺を拡げ、頸椎7はそれを締める。呼吸器の悪い人は胸椎3が突出し過敏になっている。その場合、押さえると悪化するので愉気をする。腎臓や呼吸器異常の際は、その過敏を押さえてはいけない。喉の異常は胸椎5が突出している。これは風邪の兆候。呼吸器や気管の風邪は胸椎2と3が突出している。喉の風邪は胸椎5の突出だが、ここの異常は胸椎10の突出のおそれがあるので、つまり腎臓が悪くなるおそれがあるので、それを愉気すると同時に、泌尿器の異常にも警戒する必要がある。いずれも胸椎3に変動が生じているのは共通する。肋膜は胸椎8。

 

椎骨の転位状況

背骨の転位の方向は、大雑把に言うと、上に行く、下がる、右にいく、左に行く、捻れる、飛び出す、陥没する。

 

椎骨(棘突起)の異常を見つける(練習)

一つ一つ調べようとしないで、目を閉じて、すーっと撫でる感じで調べてみる。飛び出した骨が見つかったら、目を開いて確かめる。さらに目を閉じて、すーっと探していく。これは、指の感覚を高める練習だから、正確でなくてもいい。先回やった可動性の観察のように、揺すぶったりする必要はない。

飛び出している骨でも、可動性のある骨は、一晩寝れば治るものだから、観察の対象からは外す。探り出すのは、弾力性のない骨、そこに硬結があったり、圧痛や弛緩や過敏がはっきりしている骨を探す。

そして調べ終わったら、記号などを使って記録しておく。

調べていくつかの転位異常の骨があったら、最も影響力のあるものを選び出す。それは、多くの場合、一番転位としてわかりやすい骨であるが、逆に極端に転位が見いだせない骨であることもある。中途半端な転位の骨は操法の焦点にはならない。異常の焦点は、両極端のものである。