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未来を先どりする野口晴哉の思想と技法

「整体操法高等講座」を読む(10)出産問題

さて、今回も出産の問題です。(続く次回は「腸骨操法」がテーマです。)今回も整体操法技術の未熟な私にとっては、文面の要約さえもがとても難しくて、結局のところ多くを省略せざるをえませんでした。

そこで後半部分に「野口晴哉著作全集 第八巻 後期論集一」(全生社)の「誕生前後の生活」や、「月刊全生」、あるいは私自身が直接整体指導者から教わった<妊娠・出産>をめぐる知識などを寄せ集めて、私の理解した範囲でのまとめを<参考>と題して付け加えさせていただきました。省略部分を多少でも補うことができればと思います。では始めます。

 

整体操法高等講座」(10)出産問題 1967.7.5

 

「今日は、出産そのものの問題について説明しておきたい。L3が捻れている場合、股間に異常がある場合、頭部第四に異常がある場合、これらは出産のしにくい条件です。

骨盤が拡がらない、頭があちこちにつかえている、破水したのにあとがなかなか産まれない、出産そのものがスムーズにいかないでつかえる、これらの場合は、そういう条件がある場合がほとんどで、それ以外では、出産が時間的にまだ来ないということに対する焦りというようなものもかなり多くある。・・・

妊娠はその始まりからL3に緊張が起こってくる。私はそれと、S2の硬直状態をみて出産の時期をみているのです。出産が始まると、S2に変動が起こる。そうするとL3の硬直がL4、L5に移ってくる。つまりL4、L5の方の硬直になってくる。その硬直が弛んでくると間もなく始まるのです。L4に来ると拡がり出してくる、L5に来ると排泄が始まるという順序でL3の硬直がL4に移る。移り出した時に準備の運動が起こった、準備の運動は起こったが、L5に来てから排泄が始まる。L4、L5が一緒になっているならもう始まる。別々だったら支度は出来たがまだ時期でないというようにみて参ります。L4に移って産まれないということはよくありますが、L5に移って産まれないことはありません。L5に移った時は頭部第四も緊張してきます。L3までのうちは頭部第四は弛緩しているが、L4に移ると緊張し、L5になると産まれます。だから頭部第四とL5の緊張が揃ったら産まれる。・・・L4に移ってからL5移らない場合がよくあります。多くの場合股関節に異常があります。股関節の異常は、普段治そうとしても難しいのですが、分娩前の、L4に緊張が来ている時ですと、割に簡単に治せる。・・・」(2)

 

実演(省略「とりだに操法」)(3)

 

「もう一つ出産時期の問題として腸骨の問題があります。出産の後で、腸骨が片側ずつ縮んで参ります。この期間は寝ている方がスムーズに縮んでくるんです。そして両方一緒に縮む時期が来ます。これから先は起きている方が縮みは完全にいくのです。やはり両方とも収縮過程なのです。だから片側の縮みが終えたから収縮が終えたというのではないのです。これが終えた後は寝ていると開いてきてしまうのです。これの際中に起きると、片側が縮んでいるままでストップしてしまうのです。分娩後太るとか、女くさくなくなるというようなのは皆この片側組。両方縮みだしてきても、寝ていると開いて、本式に太ってしまう。そしてお乳が濃くならないんです。そこで両方が揃った時期を見つけ出して、起こすというのが出産指導の一番重要なことになります。・・・」(4)

 

「腸骨関連」

「腸骨は生殖器の状態に応じて拡がり、縮まり、上がり、下がりしております。老衰しだすと腸骨が下がってきます。分娩の後で腸骨が下がる人は、膣の内部が弛緩してしまう。緊張力が無くなってしまう。だから収縮感がないということです。男だと、腸骨が下がっていれば勃起しないということです。年齢に関係なく下がっていれば老衰している。腸骨を上げれば回春となり、下げれば化月の方法となる。」(12)

 

「実演、実習(腸骨を縮める方法)」(省略)(19-22)

  この省略部分は、次回の「腸骨操法」にまとめて記述します。

 

(終)               

 

 

参考:

野口晴哉著作全集 第八巻 後期論集一」(全生社)の1ページから137ページにわたって、昭和53年3月15日に発行された「誕生前後の生活」が再録されています。また全集には、「月刊全生」誌上の出産関連の原稿や、未発表稿も追加掲載されています。

 

まず本書の「誕生前後の生活」の冒頭には次の内容が記載されています。

 <出産については、その前後の問題が多くある。そのことが忘れられている。育児というのは生まれた後の問題ではなく、受胎と同時に始まるものである。妊娠中の時期は、知識よりも母親の要求が尊重されるべきである。出産の後、骨盤が片側ずつ交互に収縮する時期は安静を保つべきで、トイレに立つことも禁じる必要がある。そうしないと、母乳は不足し、出ても質が伴わないだけでなく、母親が太って子供は痩せ衰える。骨盤が両側同時に収縮する時機に、速やかに起き上がる。この時機を誤ると容色が衰え、身体は弛緩する。骨盤の片側収縮は出産直後に起こるが、両側同時の収縮は普通三、四日後である。時に一週間の人もいる。>

 そしてさらに、

<出産の問題は、受胎と同時に始まる。そして胎児に対する教育として、母親に子どもを育てつつあることの自覚を求めつつ、胎児の快感を保つための生活のありかたや、母親自らの要求に素直に従って生きる生活スタイル、胎児を一個の独立した人格として認め話しかけることに意義がある>と説いている。

そして妊婦への整体指導として、

 <妊婦への<愉気>は、妊娠初期は母体を中心に行い、中期は胎児を中心に、そして後期は母体を中心に行う。母体への愉気は、腰部、骨盤および生殖器系統に行う。また後頭部。腎臓、泌尿器系統(喉、耳下腺部、側腹等)。内股や脇の下のリンパ還流の処。妊娠三、四か月は、腸骨修正の好機。受胎後は腸骨の閉傾向、九種傾向となる。三か月前後になると腸骨の開傾向、十種傾向となる。この開き始めに仙椎二番の圧痛が消える。そしてこの開傾向は出産直前まで続く。仙椎二番の圧痛が消える頃に悪阻が始まる。悪阻は、腸骨を開きさえすれば変わるものと、それだけでは変わらないものとがある。変わらない場合、D4右二側に硬直がある、あるいはD4左一側と右二側に同質の硬直がある場合である。これらは肝臓や心臓の系統。変わらないもののうち、泌尿器系統のものは、D4、D9、D10、内股、側腹、耳下腺部に停滞がある。そのほかには、単に鳩尾の緊張による悪阻というのもある。妊娠七か月は一つの節目と言える。ガスの停滞による腹痛は、L4、L5のくっつきによる。L4を上げるように調整する。むくみには、腎臓系統の調整をする。鳩尾の緊張はD5からD8の二側の弛緩へ愉気する。逆児は、L1,L2の捻れの時に多い。あるいはL3一側の硬結。調整の時期は、五か月、七か月、分娩間際。話しかけだけで変わる、たとえばL3一側の硬結に愉気し、弛んだ時に話しかける。七か月以前なら、九種矯体操法でも変わる。七か月以降はL3-D11-L1の棘突起への操法。D9-7-8の操法(これは間際には使えない)。D7-L2一側。内股・腰部活点・腰眼の操法後、L2、L3の間を押さえてヘソへ愉気する。L5-L3(これは間際まで可能。分娩までの経過は、8時間前に骨盤が開き始める。次いで子宮口も開く(ただしまだ寝て待つには早すぎる。次いでS2の圧痛が消え、S4に過敏が生じる。S2に変動が起き始めると、妊娠中からあるL3の緊張がL4に移る。L4に移ると骨盤が拡がり出してくる。L4の緊張がL5へ移ると排泄が始まる。次いで頭部第四の弛緩が緊張に変わる。この緊張と、L5の緊張が揃った時、出産となる。産むのに時間がかかるのは、股関節の可動性が片側悪く、L3、D10が捻れている場合や、腸骨左右の開閉度合いの差が著しい場合、あるいは頭部第四に異常がある場合である。早期破水、陣痛微弱、前置胎盤などの場合、L1、L5の一側の硬結の処理、あるいはL5の陥没の場合はL5、L1を上げる操法をする。後産に長時間要するのは、L1が突出している。分娩後の起き上がる時期は、当人の感じで、骨盤の中心に痛みを感じるとき。起き上がりたくなる。腸骨が左右揃った時。L3に捻れのない人たちは、分娩後四から六時間で骨盤の収縮が始まる。>と。

 

(以上)