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「整体操法高等講座」を読む<25> 婦人の操法(5)

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整体操法高等講座」<25> 婦人の操法(5) (1968.2.5)

 

前回は月経と骨盤、或いは女独特の骨盤の操法について説明致しましたが、女の場合の骨盤操法は、男のそれと違って変化の幅が非常に広いんです。それを意識していることが大事であって、特に月経時の操法は、普段の操法とは違わなければならない。

それを具体的にやっていくべきですが、まだ今の段階は、骨盤操法のやりかけの段階ですから、今日はその続きを説明致します。

たとえば腹部の操法の場合でも、男と女では大分違います。女の腹部の筋肉は、一度お産をした人達は、一種の弛緩状態になっている。筋肉が弛んでしまっている。だから、慣れますとちょっとお腹を触っただけで、お産したかどうか容易に判るぐらい筋肉が変形している。お産で荷重に負担があったのですから、しばらくはそういう変形があって当然ですが、半年も経てば元通りになる方が、体の回復する傾向としては自然です。それが一年経っても二年経ってもそういう傾向が残っているというのは、骨盤が正常な位置に戻っていない為だといえます。

だから、腹部の弛緩の原因は、大部分が骨盤の拡がりで、それが正規の位置に骨盤を治すと、普通の状態と見分けがつかないような状態に戻ってくる。

腹部の筋肉が弛緩していると、臓器も下垂しやすい。下垂していると、お腹の方に血が溜まるのでしょうか、そういう系統のいろんな異常が続いて起こるようになる。

骨盤が拡がったままでいますと、骨盤のつなぎ目の処が、特別に冷える感じ、そこだけ冷たい風が当たっているような感じというものが濃くなってきます。そのうちに、膝が冷えてくる。そして膝蓋骨がだんだん前に出て来たり、下がったりしてくる。

膝が変形するにしたがって、タコが出来たり、足首の形自体が変化して、膝の位置が下がってきたりもする。

だから、足首を見て骨盤の状況を推測することも出来るわけです。

 

月経は、正常な場合は四日ないし五日で、四日を中心として三日なら短い、四日なら長い、二日なら量が少ない、六日で終われば生殖能力自体の弱り、というように考えることが出来る。長いから多いかといえばそうではない。短い場合も弱っている。

三日で終わった、二日で終わった、あるいは一週間かかった、という場合は、一応骨盤の拡がりではないかという角度で観察し直すといいと思います。

骨盤を矯正して、締まる状態になると、不思議なことに股関節の異常がなくなってくる。体の捻れる傾向がなくなってくる。だから、月経痛や、月経困難というものがいつのまにかなくなってしまう。

捻れ傾向の殆どは、股関節の異常です。最近は、股関節異常を、骨盤操法を使って治しています。

このことは、ここ三、四年で見つけたことですが、非常に面白いと思うのです。まあともかく、骨盤の矯正が、いろんな面に及ぶことが判ってきました。

拡がった骨盤を締める方法は、お腹の方から腸骨の縁を刺戟すればよい。意外に簡単なんです。それで弛緩した腹筋も締まってくるし、太り過ぎている人は痩せてきますし、何よりお腹の脂がとれてくる。この脂は普通はお腹の方からはとれないんですが、骨盤操法を行なうと、お腹とお尻から痩せてきます。

何回かお産をすると、膝のすぐ下がきたなくなる。その原因の殆どは骨盤の拡がりのためです。骨盤が拡がって下がっているのを、持ち上げると、それがきれいになってくる。また、顔が小さくなってくる。体以上に顔が太っているという場合には、骨盤の拡がりを締めることによって、ある程度矯正できる。特に、鼻の短い、ここが抉れているような、ここが短いような場合に骨盤操法をやると、そこから変わってくる、それがかなり明瞭に変わる。

このように、骨盤操法は月経や、妊娠の問題以外にもかなり広い面での応用が利くという事であります。

 

(実技)

どなたか一人、ここの台に乗ってくれませんか。はい、仰向けになって下さい。腸骨の位置をみます。これが下がっている方を対象にします。下がっている腸骨をこう押さえまして、左手中指は胸椎一番と頸椎の七番の間に入れる、こう持って。こうやって押さえますと、これが第一回。その次は、頸椎の六番と七番の間にあてまして、外に開く。そして又七番と一番の間に行って、また同じ最初のをやる。一、二、開く、三。こちら側は向こうへ廻ってやったらよろしい。これが骨盤を上げる、引き締める方法であります。それからもう一つ行います。こう曲げて、この角度をとって、これをだんだん拡げながらこう行き、これをこう、こう膝を曲げて、このまま引っ張るんです。そしてここの部分と、それが拡がる程踵がうしろに行くんです。だからこうなっている足が、だんだん外になってくるんです。これが外側に行くんです。だからこう歩く方が楽なのに、こうやって歩くから妙な恰好で、お尻を余分に振らなければならなくなる。これを今の引っ張った後で、外側に行っているものを、内に寄せるように二、三回刺戟して、それを持ったまま真っ直ぐもう一回引っ張る。今度は、二度目は曲げないんです。これをやって。中にはここが狂ってしまって、太くなって(だんだん太くなりますね、あれは骨盤の関係なんです。)これをこう内側に寄せて、これを上げる。そのあとでこれを寄せて、それからこう引っ張ってくる。そうすると簡単に動かすだけで、骨盤の拡がっていた人は、これをやりますと足首の狂いが治ります。そういう場合には、骨盤の矯正が割にうまくいっていた。こうやっても動かない場合には、骨盤もあまり上手に動いていなかったと、そうみていいのです。

まあ、あと三十分位してから調べると、縮んでいることがよく判りますけれども、私はその調べを略していますが、その次に来た時にみると、大抵はきちんとしています。

いつでも骨盤を動かすのは四番が標準です。

これをやりますと、いろんな種類の痔がなくなります。痔ではないがしょっちゅう肛門が妙だというのも一緒になくなります。そういうものは骨盤の拡がる余波で、骨盤を動かすといろんな面にいくのだと思います。

その次は尾骨のつながり目の処、一番ですね。その一番の根元のところをちょっとショックしておく。そこを軽く叩きます。(ちょっとやってみましょう。はい、よろしいです。)

これだけやっておくと、大体拡がる傾向は変わります。大分この中にも拡がっている人がいると思いますので、その人たちを対象にして一回練習してみて下さい。

両方やるとご破算になる。右でも左でもどっちでもいいんです。これをやると、コメカミの皺が変わってきます。締まるとこの皺がなくなってくる。

同じことを男にやってみると、眉が変わるんです。長寿眉なんていうのがありますね。あれが骨盤を下げると無くなってしまう。長いのが出なくなってしまう。だから垂れ下がっていたものが、ピンと上がってきてしまう。意地悪そうになってくる。

 

つづく