野口整体を愉しむ

未来を先どりする野口晴哉の思想と技法

整体操法の基礎を学ぶⅢ(73)椎側の操法等の練習

I先生「それでは整体操法講座の第八回を始めます。まずこれまでやってきた整体操法の技術や手順の基礎的な問題について、おさらいの意味で説明してみます。そのあとで、各調律点の練習を時間をかけて行ないたいと思います。」

(椎側の操法

背骨の両端にくっついているのが<一側>です。細い線が何本もまとまって一側を構成している。異常のあるところは、それらの線が固まっている。異常が強く現れている場合は、そこの筋肉も固まってしまっていて、容易に一側に触れることが出来ない。異常のないところは、はじいてみるとバラバラと何本もの線が指に感じられる。

固まった筋肉は、相手の体を弛めていって、一側が触れるようにまで弛んで来れば、その時点で異常はなくなってくる。

一側の触り方は、棘突起のすぐ横の線、それを中心から外側に向けてはじくようにする。その線のうち強張ったものがあれば、それを真下に押さえていくと弛んできます。

 

次に、一つ飛んで<一側>がある筋肉の筋の外側、となりの筋肉のスジが<三側>です。この筋を触ってみると、かたまりのようなものがある。その固まりの外側を押さえるのが三側の操法です。

 

<二側>の操法というのは、筋肉そのものを直接に触っていく。そうすると、その筋肉の中に、ごく小さな、針の頭のような固まりがある。二側のかたまりは、三側の固まりに比べれば総じて小さいものである。また、二側は、一側のような線状のものではない。そして、筋肉の中に、ぽつんぽつんと固まりが触れてくる。それを操法する。

二側の筋肉は、背中の中央から両側に最初に触れてくる筋肉の線で、その場所の下奥にあるのが椎間孔の穴にあたる。各骨と骨の繋がり目が椎間孔であるが、そこからいろんな脊髄神経や血管が出ていて臓器に繋がっている。ただ、その穴は指ではほとんど触れることが出来なくて、触れているのは筋肉です。

骨の歪みを矯正するときに使うのは横突起や関節突起であって、椎間孔やその上にある二側を使うのではない。

よく二側や三側を押さえると、ボキボキ音がして曲がっている骨が治ることがあるが、その治るのは、大抵は身体が弛んでいて異常のないところです。昨日か今日曲がったというような骨がボキボキといって治るので、素人はボキボキいったから治ったように思うのだが、それは一晩寝れば治るようなものです。本当に悪い骨は、押して動かそうとしても動かないほど硬くなっている。いくら押してもボキともいわない。大抵の場合、相手が背骨が痛いというのは、余り悪くない処である。異常を異常として感じられる程度の処である。

知らない人は、痛いと言うから悪いのだろうと思う。しかし、異常があってそれを痛みとして感じるのは、身体にとっては良いことなのです。異常があるのに本人は痛みも何も感じなくて、いよいよ硬くなって動かなくなってしまうというのが悪い処です。

だから愉気をして身体が良くなると、風邪を引いたように感じたり、熱が出て来たり、あっちこっちが痛くなったりというような異常感を感じ出す人があるが、そういう時にはそれに惑わされないで、異常のある場所の系統の二側を操法すると、じきに良くなってくる。

同じ状態の時に、一側を操法すると、相手の異常感はさらに過敏になってきて、痛みが強くなったり、熱が出て来たりといった過敏な変動が起こる。また、三側を操法すると、臓器の痛みはとれてくるが、臓器そのものの変動、例えば下痢とか、糖尿の場合なら糖分とかいうものが、より多くなる。

二側の場合は単純に良くなる。

二側というのは、痛みを止めるには効果が非常に早い。また、脊髄反射によって、臓器をいろいろ動かすのに使えるので、その使い道が広範である。

ただし、そういう反射は身体が敏感な人には効果があるが、鈍い人にはいくら二側を押さえても駄目である。そういう鈍い人には、やはりまず一側を押さえ、次いで三側を押さえ、弛んできた段階で二側を押さえるという手順が必要となる。

相手が風邪などの経過で身体が弛んでいる場合には、そういう手順を省いて、直接二側を押すことも出来る。そういうときは押さえればすぐに異常感がなくなってくる。発熱などしている時には身体が弛み、二側も最も弛んだ状態なので、そこをゆっくり押さえていくと中の硬結に触ることが出来る。それをジーっと押さえているというのがコツです。押さえていると指が痛くなってくるが、さらに愉気していると、それもなくなって、無くなると同時に相手の異常感もなくなってくる。

 

二側の操法は、相手が息をつめている時にゴリゴリやっても効果をあげられない。二側を押さえて、相手が逃げようとするところをちょっと押さえるから効果がある。筋肉を硬直させないように、相手の裡に意欲を呼び起こすように押さえる。

押さえて、ゆっくり放すのがコツです。

 

練習

この日は、これまでいただいた資料も参照しながら、椎側の触りかたの練習と、頭部調律点の触り方の練習、さらに胸部操法の練習、最後に上肢の操法の練習が行われました。説明内容は、本ブロブにすでに掲載してありますので、ご面倒ですがそれらをご参照下さい。

ここでは、手の操法についての説明を掲載します。

 

練習

(手の調律点)

上肢の一番は、呼吸の練習によく使います。ここは頭皮が鈍っている場合に、ここを押さえると弾力が出てくる。後頭部が弛緩している人たちは、掌を刺戟するとそれが引き締まってくる。眠れないという人にも、ここを就寝前に良く押さえて整理しておくと眠れる。身体に水が溜まった人は足の土踏まずの処を押さえればいいが、頭の中に血液が鬱滞している人や、忘れたいことが忘れられないとか、身体が緊張しっぱなしだとかいうような場合は、掌の真中をジーっと押さえていると頭の血が下がって落ち着いてくる。

手の操法は、押さえる処に異常があるかないかを確かめてから押さえる。相手の手がサラッとしていたらいけない。手には多少の湿気があるが、特に掌の真中に湿り気がないのは異常です。掌が硬くなって強張っていれば異常です。そこが非常に薄くなっているのも異常です。湿気がある時は、押さえたあと放すときにべたッとした感じがある。

また、練習の時は、相手が息を吸っているのか、吐いているのか、吐いて吸いにうつるところなのかを掌で確認してください。

次は手の第二。親指の股の処。ここは腕を伸ばしたままの状態で押さえるのがコツです。心臓が悪いとか、食べ過ぎたとか、便秘であるとか、吹き出物が出たとかいうのはみんな一組で、ここを押さえます。肘を曲げたまま押さえない。ここは押さえて痛がらせるのが条件ではない。押さえていていると、硬いところが弛んできて、その中に塊が出てきます。それを押さえる。ちょっと押さえればいい。出来れば痛くなく押さえられるのがいい。

第三は手首です。手首のちょうど真ん中を押さえる。ここは子宮の位置異常や、睾丸炎で痛い時に押さえると治る。また生殖器の力がなくなってくると、ここが柔軟でなくなる。動かしてみて、手首がこわばっているのは、大体生殖器の能力が鈍っている。強張ると同時に、手首が太くなってくる。

手首が太い人は、みな不器用で、生殖器も鈍くなっている。

ちょっとしたことですぐ手首を狂わせる人がいるが、それを何度も繰り返す場合には、腰椎の三番を調整するとやらなくなる。

手首の操法は、裏筋肉を伸ばすように中指を当てて引っ張るのがコツです。

指を一本一本引っ張って弾力を調べて、狂っている指の系統の手首に親指を当てて、角度を決める。第二の場合とは違って、第三は肘から先に力が及ばないように、できるだけ肘を弛めてやる。肘をのばしたままやると、胸椎の四番、五番を毀してしまう。その逆に、胸椎四、五番の狂いを治す時は肘を伸ばしてやる。

練習で、手首の操法をしたら背中が痛くなったというのは、強く身体ごと引っ張てしまったためである。

第三は特に裏筋肉を中指でスーッと引っ張ったまま上を押さえる。上をやる時に下が弛んでしまいがちですが、そうすると駄目で、必ず引っ張ったままで上を押さえることを繰り返し練習して下さい。

第四は手の三里の場所です。ここは便秘の解消や、虫垂炎になった時押さえる。消化器が鈍るとこの第四が硬くなってくる。ここは第二と関係がある。第二が硬い人は、第四を押さえるとそこが柔らかくなってくる。その逆に、第四が硬い人は、第二を押さえると柔らかくなる。そういう関係がある。

第五は臓器が化膿した場合や、口の中に異常を起こしたときに使う処です。

 

大分遅くなってしまいました。今日はこれで終わりにします。