野口整体を愉しむ

未来を先どりする野口晴哉の思想と技法

意識

意識によってわれわれは対象を把握する。対象はわれわれが向けた意識の幅やその深度においてみずからを顕現させると言い換えることもできる。

そのときのわれわれの方法の基礎は、五感を通じての対象の把握である。

視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚など対象が持つ様々な側面に意識を向け、対象の諸局面を探索し、言語化し認識する。対象そのもの、対象全体を認識しようとするための有効な方法である。

野口整体は、意識を生命や気といった存在に集中し、主として触覚を手掛かりに身体を対象化して得られた知識であるとひとまず言っておきたい。 

言うまでもないが、身体を生理学的・物理化学的に対象化すれば、身体への対し方も生理学的・物理化学的になり、他方で触覚を主体に対象化すれば触覚的になる。対象化の方法が異なれば処し方も異なるということであって、そこに優劣を持ち込むべき問題ではない。

視覚や聴覚の圧倒的優位にある現代において、生命や気といった目にも見えず、触れることもできない曖昧な存在を対象化し言語化しようとした野口整体は、私を惹きつけてやまないわけである。