野口整体を愉しむ

未来を先どりする野口晴哉の思想と技法

整体操法の基礎を学ぶ(1)潜在体力と処の観察

私が友人とともに、I先生宅で教えていただいた、二年余りにわたる整体操法についての実習の記録です。I先生宅の広い和室で、先生一人、生徒二人で行っていただいた一週間に一度の三・四時間の実習についての貴重で濃密な記録です。標題のように講義・実習の概要・記録メモとして、全ての回を通番にしてここに掲載します。

 

整体する

整体するとは、病気を対象にするのではなく、潜在体力を対象にそれを調整・活用することである。潜在体力があまってくると、いらいらしたり、過剰食欲になったり、姿勢がゆがんだり、生活機能がゆがんだりする。整体するとは、相手のそうした余った体力のあるうちにそれを活用し調整することである。

相手の潜在体力状況を確認するために、実際に相手に触れ、筋肉の緊張・弛緩状態、とりわけその弾力性を観察し、それらから潜在体力の状況を推測して、具体的な整体操法にとりかかることになる。

筋肉の弾力が鈍ってくると、体の自然な流れがとどこおり、病気になっても回復が閊えてスムーズに経過できなくなる。

 

頭部調律点に触れる実習

第一から第五に触れて刺戟してみる。

刺戟が刺戟となるのは、相手がそれを刺戟として受け取ってはじめて刺戟となる。相手の注意が集まっていないと、いくら強く刺戟しても刺戟とはならない。

そのために、相手の呼吸をコントロールする技術が必要となる。その技術があれば、わずかの力で相手に刺戟として感じさせることができる。

 

上肢調律点に触れる実習

第一から第七までのうち、第四までに触れる実習

実習の課題は、各処に正確に触れ、その処の弾力を観察し、その処の呼吸を感じとることにある。

からだは、呼吸とともに動作している。息を吐くとき体は前屈し、吸うとき体は反ってくる。筋肉の場合は、呼吸に合わせて伸びたり、縮んだりする。また、腕の重さは、吸うときには軽くなり、吐いたときには重くなる印象を持つ。

上記の実習は、整体操法の重要な技術である「相手の呼吸の間隙に動作する」ことの基礎ともなる。