野口整体を愉しむ

未来を先どりする野口晴哉の思想と技法

整体操法の基礎を学ぶ(6)腹部調律点の観察

野口整体を愉しむ、その愉しみの一つが操法の実習です。今日はその六回目の記録です。よき指導者に恵まれ、基礎の基礎から手ほどきを受けることの喜び。それは野口晴哉氏の声を、I先生を媒介にして、直接身に浴びるような体験にわたしには思われる。

整体操法が、整体法の体系の中でも特殊だと言えるのは、それが徹底的に意識化、言語化することを志向しているものだからである。誰にとってもその言葉に触れ、その言葉の意味を身をもって探求すれば、やがて自分のものにすることができる。もちろんたやすいことではないが、そのために野口氏は言葉を尽くして、後進のわれわれに道を示してくれたのである。そこには秘伝といわれるべき何ものも存在しないはずの世界である。真に理解する者がいるか否かはまた別の問題であるが。

意識化し言語化した新たな身体像、人間観を指導者のみならず、少しでも多くの普通の人々とも共有したい、と野口氏は考えていたのだと思う。だから、その言葉には神秘主義的、秘伝的なにおいや装いはまるでない。ただ唯一言語化困難な「気」や「生命」というもの以外には・・。しかし、そうした言語化できないものはできないと明言し、決してそれを手放さない、そこがたまらない魅力である。

 

 

腹部調律点

前回まで、処の異常、椎骨の異常をみてきた。つぎに問題になるのは、それらの異常が整うか否か、調節したときにそれが保つか否かである。それを一応知るためには、その人の現在の体力状況を知る必要がある。この体力状況を知るための有効な方法が、腹部の弾力状態をみていくことである。

体力のある人は、腹部で深く呼吸している。疲れるとみぞおちで呼吸する。さらに疲れると胸で浅い呼吸をする。さらに疲れがひどくなると鼻で呼吸する。鼻で呼吸するようになると危険である。こうした呼吸の深さの度合いを観察したあと、今度は呼吸のリズムを観察する。リズムが乱れ、浅い呼吸をしているのは、とにかく疲れており、体力がない状態である。

第一 お腹の一番上の、剣状突起から指二本分下の硬いうちにへこんだ処。押さえて手がスーッと入るようなら体力あり。

第二 ヘソの上と、第一との中間のへこんだ処。臓器の位置状況をみる。

第三 ヘソと恥骨の上との中間。ヘソの下二、三寸のへこんだところ。高齢者は指がスポッと入ってしまう位へこんでいる。丹田。生命力の湧き出す急処。若い人のは判りにくい。

第四 禁点より指三本左の肋骨の下。太陽叢。心の停滞状況をみる。

右脇腹 痢症括点 老廃物

直腹筋

以上が、体力状況を観察する処である。

 

第一は虚が順(正常)、指がスーッと入れば正常。逆に第三の虚は異常。ここは実が順。第三の虚は体力のない老衰状態。生殖機能の不全状態。第二は虚でも実でもない冲の状態が順。第四も冲が順である。

お腹に余分なものがたまっている時、痢症括点に愉気すると排泄物が出て掃除される。

感情が高ぶると第四が硬くなる。

あたまの中で集中や分散がノーマルに働いていないとき、へその両側が硬くなる。

お腹と腰の運動がスムーズに行かないときは、側腹が硬くなっている。

 

腹部観察の実習

腹部調律点の位置の確かめ。

頭部第二と直腹筋の関係の確認

腹部第一、またはみぞおちと肋骨の関係 心悸亢進や胃痙攣の際、肋骨を上げるとおさまるのは、みぞおちの閊えが通るからである。

全身の象徴として腹を観るということも考えておきたい・・。腹は柔らかくそして弾力性があって硬結が全くないのが良い。力を込めれば石の如く、力を抜けばつきたての餅の如く、そして心窩が柔らかで凹んで、下腹が満ちてふくれているのが良い。・・見た形だけで良い悪いはきまらない。触って整圧点を探って初めて判る。健康な腹の整圧点は第一が虚、第二が冲、第三が実である。・・・

 

(参考1:野口晴哉整体操法読本 巻二実技」より) 

虚とは整圧点に米粒大の凹みがあり、実とはその部に米粒大の硬結があり、冲とは何でもない状態をいうので、それが上から虚、冲、実となるのが順であり、然らざるを逆というのであります。しかしこれは解剖学的根拠があるのではない。ただ生きて動いている腹にのみある。・・・腹部の整圧は息とともに動作して腹で息をするよう導くことに目的を置いて操法するのであるが、この活点(注、引用者:痢症活点)の整圧は充分に力を集めて耐えるのであります。

 

 (参考2:野口晴哉整体操法中等講座(1967.2.25)」より)

恥骨 

体の真中の故障はここの操法で整う。鼻の故障でも、声帯の故障でも、真中のものはみな恥骨の真中を押さえると調整される。痔なども変わってくる。皮膚の異常もここであるが、呼吸器(皮膚は呼吸器の一種)の異常も恥骨に変動がでてくる。

臍のまわりの6カ処

ここを時計の針の動きの順に押していく。押す場合、掌を使って臍に向かってかきあげるように押さえていく。絶えず体の目方をかけて、指で押さないで、相手が痛くないように押さえていく。ちょっと押さえるだけで非常にどこかに響くところがあれば、それは異常。その響いたところをジーっと押さえていると、どこを調整したか判らないが変化しまう。ただ、そこが押せないほど強く響いたり硬くなっている場合には、左の肋骨の下を押さえる。お腹の右側が硬い場合でも、肋骨の下をやる場合には左を押さえる。臍の周りをやわらげるのは左。