野口整体を愉しむ

未来を先どりする野口晴哉の思想と技法

整体操法の基礎を学ぶ(9)下肢調律点の観察

下肢調律点に触れて処を憶える

膝窩 

ここは気の問題を離れても痛い処。疲れている時、消化器や生殖器に故障があるとき、泌尿器の故障、小便の出のわるい時、みなここが痛い。ただ気が入っている時と抜けている時とでは、痛みの感じが違う。

 

膝の上 

大腿部に九か所。それらはすべて、触れると筋肉がへこんで指が入るように穴になっている。

大腿部外側に三か所。足の伸縮時に、最後に緊張するのが三番目。最初に緊張するのが一番目の調律点で、ここは足を持ち上げるとへこむ。

大腿部内側に三か所。リンパなどに異常がある時に処理する処。

真後ろに三か所。ここは、へこまず、触るとそこだけが硬くなっている。

 

膝の下

九か所。外側、腓骨に沿って、へこんで固まりがある所、三か所。一番目は内側の骨の方に向け、次に真下に押す。三番目は上に少し持ち上げるようにすると当たる。普段は一番目を多く使う。二番目は少し外側を押さえると、腰椎の悪い人は腐った処を押されたような不快な痛みがある。

上記の他に、内側に三か所、後ろに三か所、足の甲に四か所、足首に二か所、足首の後ろに一か所、足の裏に一か所というこれだけの調律点が下肢にはある。

また、足の親指の根元に活点がある。これは腎臓に栄養が停滞している時や、肝臓に異常がある人は痛い。

膝裏は調律点というよりは、睾丸炎や卵巣炎の激しい痛みの救急操法に使う。ただし、妊娠時には使わない。

春先などの足の冷え、のぼせの時は、膝裏を押す。顔ののぼせ、歯痛、頭痛、顔が赤くなったり、むくんだりといった気が上にあがっていると、額が熱くて、頬は冷たくなる。ひどくなると、神経衰弱やノイローゼになる。その場合、膝窩の内側とアキレス腱が冷たくなっているから、そこを押さえる。

 

(参考:野口「整体操法読本 巻二実技」より)

人間の姿態観察の第一歩は、骨盤と足から始まる。骨盤も足の影響を受け、足首を矯正するとその歪みが自ずから正規になることはしばしばある。膝蓋骨を挙上すると腰椎の硬直が弛む。骨盤の捻れなども変わる。骨盤の歪みや捻れは脊椎転位の重大な理由であるが、それが又内臓に迄影響を及ぼす・・

太い脛は脛骨と腓骨が外彎している。之を矯正すると胃袋のつかえなどが治ることもある。細い脛は脛骨と腓骨が内彎してくっついている。之の矯正は上部胸椎の異常をも改める。足首に至っては全体重を支えているのだから、さらにその矯正によって影響するところは複雑である。

下肢の整圧点は立って力が集まる部と、立つために力のぬける部にある・・

 

・・吾々は手で胃を触るのでも心臓を触るのでもない。整圧は処に行うのである。たとえば腸の上を押さえても腸を押さえているのではない。下肢を整圧してもそれは下肢の為ではない。咽喉の痛い人には足を押圧すればその痛みは消散し鬱血はとれる。しかし、足を整圧するのは咽喉のためではない。咽喉に異常を現すような体の平衡維持のはたらきの為だ。指を観て指を見ているようでは処を会したとはいえない。一本の指に全体の生命を感ずるようになって始めて処が生きるのである。又、処のことを知ると処に活殺の力があるように思い込んでしまい易いが、処は処だ。それを活かす技がなくては活きてはたらかない。処は知ればそれで良いのではない。それを活かして使いこなすようにならねば役には立たない。・・・