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整体操法の基礎を学ぶ(28)腰椎三番における体癖傾向の観察

腰椎三番における体癖傾向の観察

腰椎三番が前後に偏るというのは、緊張するほどに前の方に力が入る状態です。六種体癖の場合は、力が前に入っている時はくたびれている状態。いずれの場合も、三番は立って前に力が入ると、そこが飛び出してくる。背骨は正規であれば腰椎三番、胸椎五番、頸椎三、四番の境目、尾骨のところで湾曲して一定のカーブを描いている。赤ん坊の時はそれがなく、まっすぐです。成長と共に湾曲してくるのは、それが直立動作をする際に都合がいいからです。体に左右差があれば、これに似た湾曲が生じるのですが、ここでの湾曲は、前回みた腰椎三番の左右転位に伴って生じるバランス調整の結果として三番の二側が硬直するということであって、調整的な意味しかありません。

 

前型の人は、腰椎部分の湾曲が足りないため、立った姿勢のときも、腰がすーっと真っ直ぐになっています。だから、そういう姿勢を見れば、前型の傾向の人であるとすぐにわかる。そして、腰椎三番は飛び出している。この飛び出しが、立ったことによるバランス調整のための飛び出しかというと、寝ても横になっても飛び出しているから、そういう習慣が体についてしまっている為だということが判る。

 

こういう傾向とは逆に、三番が奥に入ってしまう傾向の人がいる。三番が四番を抑えつけるように四番に影響して、体の奥の方へ入ってしまって見えないほどになっている、これは閉型の体癖傾向の人。実際は三番が上がっているのですが、奥に入っているために、下がって四番にくっついているように見えるのです。

 

腰椎三番の観察(練習)

伏臥で、前回やった三番の左右転位の状態を観察する。つぎに、三番の捻れの状態を観察する。腰椎二番と三番の逆側に硬直が見られるのは、左右傾向。同側に硬直があれば捻れ傾向。三番が飛び出していれば前傾向。三番が引っ込みすぎていれば閉傾向。開傾向はそれが混じったようなものだから、これはひとまず省略して、今日は三番の左右、捻れ、閉の四つを観察してください。

上下型傾向は、上記とくらべてちょっと観察が難しいが、上下は前後系統の三番に似ていて、三番が上がっている。

 

隊癖の出発点は、腰椎に集まる力のズレにあるから、三番にどういう力がかかっているかを観察すれば、その人の体運動の傾向やその特性が判ってくるわけです。

この三番の観察は、大変難しいものであるから、沢山の人の腰椎三番を調べて、なんども繰り返し練習することが必要になります。

三番が上がっていれば上下、下がっていれば開、引っ込んでいれば閉、突出は前後、右か左に偏っていているのは左右、二番と三番の二側の硬直が同じ側にあれば捻れです。もう一度観察し合ってください。

観察がうまくいかないのは、相手の体が緊張して弛んでいないからです。そういうときは、相手を伏臥にして、どこでもいいが、とりあえず腰椎三番あたりに手を当てて、体全体の揺すぶりを行なってください。揺すぶりが足の先の方までおよぶようにゆすります。コツは、当てた手で腰全体を一旦押しますと、その反動で戻ってきますので、戻ってきたらすぐまた押すのです。それを何回かやって、お尻の動きと足の動きが交互に、互い違いになってきたら弛んできた証拠です。そうなったら、三番を挟むようにして、やりやすい状態で調べてください。

観察してもよくわからなかった人は、仕方がないので、仰臥になってもらって、その人の臍がどっちを向いているかを見てください。重心のあるがわに臍が向いている。腰の硬かった方に臍は向いている。左か右に重心が偏っている人の目は細くなっているし、顔も小いさくなっている。また、その側の胸の方が厚くなっており、脚も太い。

観察してみて、三番に左右差があった場合は、仰臥になって、硬くなっている側の足をくの字に曲げてみる。そうするとその硬直が弛んでくる。くの字に曲げたまま、足を少しずつさらに上にあげていくと、もっと弛んでくる。それをもっと上にあげていくと、今度は逆に硬くなってくる位置がある。その位置でストンと足を落とすと、三番の硬直が左右均等になって転位が正常の位置に回復する。それも一応、矯正法としてやってみてください。