野口整体を愉しむ

未来を先どりする野口晴哉の思想と技法

整体本来の道を

治療から体育へと大きく舵を切った1964年。先に見た「月刊全生」に続く6月号には、「整体本来の道を」と題する野口晴哉氏の文章に、指導者や会員に向けての新生整体協会の決意が示されている。

 

「・・私にとっては戦前の落合道場の時期が最全盛の時で、治療技術者としてはベストだったのです。しかし今は治療をもう一歩進めた体づくりに集注しておりますが、このほうがやり甲斐があるような気がしております。

なぜその立場を捨てて、体づくりを心がけるようになったのかということは、そうした立場にたたないと、本当のからだのの使い方の指示ができず、不摂生の後始末ばかりすることになるからであります。これでは百年清河をまつことと変わりはありません。

不摂生を活かす心がけ、不摂生を養生にする体の使い方、からだに適うからだの使い方、からだの特性を活かす使い方、それを知ってはじめて皆さんの健康生活を保つ道が拓かれるのではないでしょうか。

立場がかわったとはいえ、自然健康保持会出発の心が変わったのではありません。かえってこの目的を達成するには修理専門ではいつも後手にまわると考えたから、体づくりを心がけるようになったのであります。

40年の治療技術追求の結果、得た知識が、体づくりということであります。

いのちの姿勢を正すということが修理より、明るくかつ確かなことなのであります。

しかし、治療技術者としての40年の生活も無駄ではありませんでした。これがなかったら、体づくりも空念仏か、観念上の産物にすぎなかったかもしれません。

体づくりの技術は、いままでお教えした整体操法本来の面目で、治療技術は整体操法を治療技術として使う方法としてお教えしたはずです。その方便的な使い方を、本来の使い方としてほしいとねがうのです。修理ではなく丈夫にして保つよう技術を使うことであります。

どうぞ私の今ある立場に同調していただきたい。

整体操法を治療技術として使うことはもう古い。」