野口整体を愉しむ

未来を先どりする野口晴哉の思想と技法

整体操法の基礎を学ぶ(15)脊椎操法

脊椎操法

脊椎の異常というのは、それを正すことより、それがひとりでに整っていくように仕向けることに意味がある。脊椎そのものを調整するということは、整体操法ではあまりしない。ただ、曲がっている状態に応じた刺戟を加えると、自動的に整っていく。

 

脊椎が上下の骨にくっついている場合、上が開いている場合は下がり、くっ付いている下が開いている場合は上がり、左右に寄っている場合は左より、右よりと言う。そのほかに捻れている場合は捻れ(ねじれ)というようにまず骨の転位を調べる。

 

二側

椎骨の両側に、筋肉がある、これが二側。その筋肉の下に、棘突起があるが、筋肉に触ると背骨の転位の状態によってその硬さが一様でないことを感じる。椎骨は間接になっており、靭帯によって結ばれている。椎骨の左右に一対の硬い筋肉が線状になって走っているが、この筋肉は椎骨とも靭帯とも関係している。従って、椎骨のすぐわき(一側)の硬直状態や、その外側の筋肉(二側)の硬直状態を調節すると、椎骨の転位が自動的に元に戻ってしまうことが多い。あるいは、やや強引だが、転位した骨の横突起そのものに直接刺戟を与えることで、調整されることも多い。

また、上下の関節突起の間にある椎間孔という穴があって神経がでているが、その穴が椎骨の転位によって小さくなり潰されたようになると、神経の力が失われると、元に戻れなくなってしまうが、ここに愉気をすると、神経の張力が戻ってきて、自動的に椎骨の転位が正常になっていく。

椎骨の転位は、上記三つの異常が、転位したままになっている理由なので、それらの方法を用いて転位調整を行う。

 

三側

内臓に異常が生じて、その異常が椎骨に反映して、その為に骨が転位している場合には、二側の筋肉のさらに外側にある上下に伸びた筋肉(三側)に硬直が起こる。だから、三側に異常が出ている場合には、何らかの臓器に異常があると考えていい状態です。その場合は三側を刺戟して調整する。

 

背骨観察の手順

背骨を調べる場合に、初めは棘突起、それから一側、二側、三側と調べる。二側は大体椎間孔に当たり、三側が横突起あるいはその外側の筋肉に当たり、一側は脊椎筋の中にある。正確に言うと、脊椎筋の内側にある線状のものが一側。普通は脊椎筋と内側の線を合わせて一側と呼んでいるが、厳密にいうと、一側の線は、健康な状態の時は、横突起のすぐそばに、七、八本の細い線がバラバラと数えられるが、異常を起こすとそれらが固まって一本になり、また一本になった線の中に、更に固まって硬結を生じる。この一側の固まりに呼応するように、その外側の筋脊筋も固まりになる傾向があり、筋肉自体が硬くなる。二側は椎間孔のある場所で、ここは愉気するのに使う。三側は横突起及びその外側の筋肉であり、椎骨転位を正常に戻すという技術は、主としてこの三側で行い、二側でやる矯正は、その転位が自動的に戻るということが前提にある場合に、そこを愉気によって正していく、というのがやり方としては一番推奨される。(カイロプラクティックでは、横突起のところの利用が一番多い。)もちろん、横突起そのものを押して、力を抜くという技術を使うこともある。しかし、愉気をして自動的に矯正していった場合と、横突起への力の刺戟による矯正とでは、その結果に、大きな質的違いが生じる。愉気は二側及び一側の硬結を除くように行うが、この方法は、一見弱いように思われるかもしれないが、矯正されたあとの状態とくらべてみればその違いは歴然である。

椎側の位置関係

椎骨と、二側、三側の位置関係は、一直線上にはないので注意を要する。二側の椎間孔の位置は、横突起よりやや上のところにある。つまり、その椎骨の棘突起に添って人差指を当てると、中指の頭に位置する処がその骨の二側ということである。さらにその外側の薬指にあたるところが三側である。一側は棘突起のすぐ脇にある。一側を確認し、一側がバラバラと数えられるようなら、その骨は臨時の転位であって、異常ではない。一側が一本に固まり、硬結を生じている場合が異常である。一側の触り方は、伏臥の相手の脇に座り、棘突起のすぐ手前に指をあてて、手前に軽く引っ張るようにする。ギュッとおさえてはいけない。その時に、相手が息をつめたままだと固くなっていて一側が判らないので、息を吐かせてから調べる。バラバラになっているか、一本に固まっているか、そこに硬結を生じているかなどを感じとる。

次に、同じ骨の反対側の棘突起の脇に親指を当てて、さっきと同じ要領で、向こう側に軽く押すようにして調べる。

今度は、またがって、一側を押すようにして調べてみる。押しながら、愉気をして当てた親指で動かしてみる。バラバラと七本ほどにはじくことが出来れば正常な状態である。一本に固まっているのは異常。ただ、その固まり方には二種類あって、一側の線が全体としてまとまって固い場合と、固まった線の中にさらに硬い筋が一本通っている場合とである。全体が硬くなっているのは、本来七本ほどあるこの一側が、固くなってしまったために判別できないためにそう感じるわけである。この場合、エネルギーが余っている人に多い。食べ過ぎても硬くなる。一方の、固くなっている真ん中に一本の硬い線が生じている場合は、明らかに異常である。この硬い線は、だいたい異常を内在させているのだが、この線が上下に続いているなかで線の切れ目が生じている。その切れ目の処に多くは硬結が見られる。異常の場合、エネルギー過剰の場合と異なって、脊椎に弾力がないので区別できる。しかも一側に弾力がなく、乾物のようになっている。これは老衰状態、麻痺して萎縮している。この過剰状態と、麻痺状態の区別が必要である。

 

エネルギーの過剰は、何らかの要求が潜んでいる。そこを刺戟すると、その要求が顕在化してくる。たとえば熱を出す要求であったり、痛みを感じる要求であったり、痒みを感じる要求であったりだが、その処の強張りを弛めると、途端に急性病状態になってその要求を果たす。また吐いたり下痢したりする。済めばよい方向に向かっている。

それから、極度に疲労してしまうと、過剰の場合と同じような硬さになる。過剰、疲労、鈍り、衰弱といったものは同じように硬くなっている。衰弱は水気がなく硬い感じ、疲労は表面が硬い感じ、過剰は中まで硬い感じ。

 

正常な処と、異常な処の境に過敏が生じる。多くは臓器の異常と直接関連があるか、臓器の異常の反射である。いまの異常と直接関係した硬結と、異常の反射としてある硬結があるが、この硬結に愉気をして過敏の処が増えれば関連がある。関連があればその硬結を処理すれば過敏の処が良くなっていく。

一側は、バラバラのもの、一本になったもの、一本も触れないもの、一本の中の離れているもの、全体が硬直している中の過敏と、その逆に全体が硬直している中のバラバラがある。この全体が硬い中のバラバラの始めと終わりに過敏がある。